育休をとった男性教員の体験談

育児休暇について

文化教育学部、美術工芸課程 小木曽誠
2010.12.5
 

そもそもこのような報告書を私はあまり読んだりしないので、私がこのような報告書を書いたところで、何か世の中が変わるとは考えておりません。また「考えを変えなさい」などと大それた事を言うつもりもありません。気楽な気持ちで読んでいただければ幸いです。しかし育児休暇を取得してみたい男性や、もちろん女性。またその方々を取り巻く人に少し状況を説明出来ればと考えております。男性が育児休暇を取得したこと自体が珍しいこのご時世ですが、「育児=妻」の仕事という考え方が一般的な世の中で私の単なる好奇心で休暇を取得したことが、私自身少し成長できたように感じます。このような機会を与えてくださった大学の関係者各位、学生、美術工芸の先生方、事務方の皆様方にこの場をお借りして深く御礼申し上げます。

 「好奇心」という言葉を申しましたが、「育メン」なる言葉がはやっております。私には今年4歳になる長男と、8月に生まれた生後3カ月(育児休暇中は生後2~3カ月の間)の長女がおります。長男が出生した時から育児には積極的に参加してまいりました。おむつを替えたりミルクをあげたり、おむつは布を使用しておりましたので、それを手洗いしたり、妻が疲れているときには、長男を公園に連れていったり、さまざまなことをしてきたつもりです。「育メン」なる言葉がはやっている昨今より前から完全に育メンでした。

 私自身のお話をさせてもらうと、文化教育学部で美術工芸課程というところで、油絵の指導をしております。私の作品は人間を描くことが多くあります。そのため一般的な人よりも深く人間を観察し、考察する癖が付いているので、育児にもはまってしまうのかもしれません。また「先生」などと呼ばれてしまっている以上教育の原点である「育児」にとても興味を示してしまうのかもしれません。毎日育児に携わっているお母さん方や、幼稚園、保育園の先生方、教育の専門家はこれを読まれて、たった一カ月しか育児に携わっていないものが何を言うのか!とおしかりを受けるかもしれませんが、ご容赦いただければ幸いです。

 育児休暇を取得したのは10月24日から1カ月余りでした。取得にあたり給与等があまり出ないので妻は渋りましたが、「積極的に育児に参加するから、取らせて」と頼みました。特別幼児教育の専門家でもなく、男女参画の専門家でない私が「育児休暇」を習得しようと考えたのは、大きく二つの理由があります。一つ目は、昨今のニュースなどを見ていると、子供が親を殺害したりするようなニュースが流れております。そのニュースの中で、よく父親は「子育ては妻に任せていた。」というコメントを耳にします。妻に子育てを任せていたから、私は関係ないというような態度の父親には私はなりたくないという気もちです。二つ目の理由としましては長男が誕生した時、妻はとても大変そうでした。長男はとにかく寝ない、食べない、いつも泣きわめく元気な男の子でした。私は昼間仕事に行っているのでよいのですが、妻は24時間母親をしなければなりません。本当にいろんなところに相談に行ったり、一生懸命努力して、勉強していました。妻の実家が青森で、私の実家が奈良ということもあり、なかなか近くに頼る人もいなかった時期でした。(現在は近所の奥様達と井戸端会議などをしております。)長男が9カ月の時妻から「長男を保育園に預けたいという申し出がありました。」私は「少し預けるの早くない?」と言いましたが、妻は心身ともに限界でした。私も教育に携わっている人間でありながら、情けない気持ちになりました。一番身近な人間がこれほどまで追い詰められていることに気がつかない自分自身が情けなくて、申し訳なくなりました。大学では先生などと呼ばれながら、自分の足元も見えていなかったのです。今では元気に回復しましたが、妻は当時、眠れない日々を過ごしておりました。このような理由から二人目を出生した時には是非「育児休暇」を取得しようと心に決めておりました。

 家事について  よく「育児休暇」を取得したというと「休暇」という言葉だけクローズアップされて、「いいなぁ」「子どもと一緒にいれて楽しかった?」などということを言われますが、大間違いです。これはしっかり訂正しておかなければならないのですが、積極的に「育児」をするとこんな甘い考えは出てきません。赤ちゃんというのは「抱っこ」が大好きです。よく「抱き癖」が付くという事を言われますが、最近の育児書などには「抱き癖が付いても構いません。愛情を注ぎましょう」といった事が書いてある育児書もあります。どちらが正しいのかはよく分かりませんが、10ヵ月間お腹の羊水の中で揺られていた赤ちゃんが、世の中に放り出されて間もないのに、泣いていたら抱かないわけにはいきませんでした。「抱っこ」というのは田舎のお爺ちゃん、お婆ちゃんがちょっと遊びに来て「抱っこしようか?」などというのは甘い考えでではございません。現在6キロを超えるわが子を抱きながら、朝ご飯を作り(これは殆ど妻がしてくれていました。)、長男を幼稚園に送り出し、掃除、洗濯を行います。抱っこしながら赤ちゃんが深い眠りについたら、布団にそっと置くのですが、大体30分ぐらいで起きます。3か月を過ぎた我が家の長女は一人遊びをしながら一人で眠ってくれたりするので、とても楽ですが、長男は全くそのようなことがありませんでした。長男は6カ月から9カ月ぐらいのころは寝なくて、私が仕事から帰ると、夜9時ごろから一時間ぐらい現在住んでいるところの界隈を散歩しておりました。このことから分かっていただきたいのは、6キロを肩から担いで一日の大半を過ごす事がどれほど辛いかという事です。よくお母さんで「手が腱鞘炎になった。」という事を聞きますがとても頷ける話です。

 食事について 毎日の食事も大変です。まず長男の幼稚園の給食と晩御飯が被らないように考えます。2時半には長男が帰ってくるので、それまでに大よその献立を考えなければなりません。長男は8時30分に幼稚園に行き、14時30分に帰ってくるので、家事はその間が勝負です。勿論その間にごみを出したり、掃除、風呂掃除、洗濯など全てこなします。勿論妻と協力しながらですが、かなりの重労働です。6キロの赤ちゃんを抱きながら。昔テレビで「専業主婦の時給は500円ぐらい」などと報告がありましたが、もっと高くて良いと感じました。ある程度下ごしらえして、長男の帰宅を待ちます。どうしても父親は自分が食べたいもの(私の場合はチャーハンや、餃子、ハンバーグなど)に偏ってしまい、栄養のバランスなど全く考えずに反省しました。

掃除、洗濯について  特に洗濯には気を配ります。子供が二人いるとやはり一日一回は洗濯機を回すことになります。前の晩から出来るだけ洗濯機機能の予約設定にし、朝7時には洗濯が終わっている状態にしました。しかし赤ちゃんはおむつを超えて汚物が飛び出ることもあります。これはぬるま湯で手洗いして洗濯機に入れるようにしておりました。また洗濯は前日から天気予報をチェックして予約しなければなりません。もし雨が降った場合は近くのコインランドリーに行って乾燥機にかけておりました。掃除も長男がいると細かい食べかす等がかなり散らばるので毎日のように掃除機をかけなければなりません。食器を洗うことも、風呂場の掃除も毎日の仕事なのです。

育児について  育児は長男と長女二人のことを書く必要があると考えます。 長女は基本的には抱っこです。とてもおとなしく、よく「女の子はおとなしくて楽よね」という事を聞きますが、本当に今のところ手のかからない子です。問題は長男です。朝幼稚園に行く時、近くまで幼稚園の先生方が迎えに来てくださるのですが、いつもドキドキしていました。気分屋の長男は突然「幼稚園に行きたくない!」と泣きだしたりしておりました。育児休暇中、私が毎日家にいるということが当たり前だったので、「幼稚園に行きたくない!」となるのです。勿論長男は幼稚園から帰ってくると「父は!父と遊ぶ!」となります。当然家事もままなりません。妻は赤ちゃんのほうに目が行っているので、長男は完全に私を所有物のように扱っておりました。お風呂に入れるのも、寝かせつけも、絵本の読み聞かせも全て私の仕事となってしまいました。

総括 以上の報告の通り「育児、家事は大変です。」と言いたいところですが、それでは育児休暇を取る男性が出てこなくなるので、いくつか貴重な経験をお話しさせていただきます。 長男の遠足に同行する機会がありました。何人か男親も参加していて(100人中5人ぐらいでしょうか。)家での長男と違う顔を見ることが出来ました。因みに父親のみでの参加は私だけでした。家では「チチ」と私のことを呼んでいるのですが、幼稚園では「お父さん」と言ってくれました。ちゃんと順応して、お利口にしていたのでとても安心しました。家ではストレスを発散させているのか、甘えているのか分かりませんが、違う息子の顔を遠足では見れてとてもうれしく思いました。毎週水曜日はお弁当の日なのですが、一度私が作りました。朝6時に起き、ハンバーグにおにぎり、野菜などを入れて。帰ってきた長男の息子のお弁当箱を見て少しウルッと。完食してくれることがこれほどうれしいことかとはじめてわかりました。妻は長男が食事を食べてくれない時、本当に悩んでいた理由が少しわかった気がします。最近は偏食も減りつつあります。

 長女は本当に成長が早いです。長男の時に感じれなかった、手の動き、顔の表情の変化、鳴き声、いろんな事の観察を通しながら、一番大切なことは「通じ合おうとすること」ではないでしょうか。とにかく話しかけると泣きやむのです。笑ってくれる事、本当に幸せを感じることができます。

 ある時、佐賀市内の幼稚園の園長先生の講演会があるということで、妻と私、長女で出かけました。その講演会は「子育てについて」のものだったのですが、教育心理学に近いようなものでした。私自身教員免許を持っていて、大学時代その科目は3回目でやっと単位を貰えたぐらい落ちこぼれの大学生だったので、とても新鮮に講演会を聞きました。その時ふと周りの奥様達を見たとき、気がつきました。とてもとても真剣に話を聞いているのです。とても沢山の質問が飛び交います。大学生などに「質問は?」などと問うても、まず質問は殆ど返ってきませんが、その講演会は、講演の途中でも質問が飛んでいました。少し涙ぐみながら聴いている奥様もおられました。私自身まだまだ真剣に育児に取り組んでいないのだと痛感させられる瞬間でした。

 核家族化が進み、子供を母親一人で見るなことが多くなってきた世の中で、楽しく父親も「育児」に参加されてみてはいかがでしょうか?育児は大変です。家事も大変です。でも喜びも沢山あります。

長男に「好きな食べ物は?」と聞くと「ちちの作ったチャーハン。」と答えてくれますよ。長男に「誰と結婚したい?」と聞くと「ちち」と答えてくれますよ。

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